ifネギま! 〜一話一妄想〜




第二話



 明日菜のためにホレ薬を作ったネギだが、明日菜のせいでネギが薬を飲んでしまう。クラス中の女子に追い掛け回され、のどかに助けを求めるネギ。二人は図書室に逃げ込むが、のどかもまたホレ薬の効果を受けてしまう。アクシデントからネギを押し倒す姿勢になったのどかは……。


 のどかの声を聞き付けた明日菜は、すぐさま図書室に駆けつけた。
 さっき見せつけられたホレ薬の効果からすると、のどかもネギを追いまわすことになるだろう。ネギの方は別にそれで害はないだろうが、あとで正気に戻ったのどかが自分の行動を思い出した時どうなるか。
 あの性格だから、自分のはしたない行いをひどく気に病み、最悪それがトラウマになってしまうかもしれない。
 そんな不安が、ただでさえ人間離れした明日菜の足をいっそう速めるのだった。
 ついに図書室の入口にきた明日菜。何やら中から、物の崩れる音と二人分の悲鳴がかすかに聞こえる。
 慌ててドアノブを掴んで回すが、途中で止まってしまい、いつものカチャリという感触が無い。逆方向に回す。やはり駄目だ。
「げ、何よコレ。カギがかかってる」
 両手でドアノブを掴み、必死で左右に回転させるが、内側からかかったロックがそれで外れるわけもない。
 明日菜の額に汗が噴き出す。一体、二人は中でなにをやっているのだろうか?

「あ……あの宮崎さん………ど、どいてください〜〜……」
「は……はい……」
 こめかみから汗を流しつつ、ネギが遠慮がちに言う。
 ネギは本の山から崩れ落ちたのどかに、押し倒されたような体勢になっていた。
 普段、長い前髪のために隠れているのどかの顔の上半分が、この下から見上げる格好だとよく見える。
 さきほど一瞬だけ見せられた、汚れの無い可愛らしいのどかの素顔。それが朱に染まりつつ、ネギのことをじっと見つめている。
 熱があるような、半ば夢の中にいるような、ぼうっとした表情だが、目の焦点はピタリとネギに合っている。
(わわわ……こっちジーッと見てるよ──。これもホレ薬の効果なの──)
 はいと返事したにも関わらず、のどかはどくどころか逆に顔を寄せてくる。
(わ)
 のどかはさらに顔を近づけるため、床に突っ張っていた右手のひじを曲げ、左手をネギの頭を抱えるように、彼の後頭部にまわした。
 のどかの顔がさらに近付き、その長い前髪がネギの額に触れた。
(わわわ)
 ネギは慌てて叫ぶ。
「み、宮崎さんダメですよ。先生と生徒がこういうことしちゃいけないってお姉ちゃんが……」
 のどかはそれを聞いて、ピタっと止まった。どこか虚ろな声で言う。
「は、はい……そうですね──…」
 ネギが安心したのも束の間、ほんの少しの間をあけて
「………ゴメンなさいです……」
 と再びネギの唇に迫った。
(言ってることとやってることがちがぁーう!?)
 その時、ネギの声にならない叫びに応えるように、

 ドッゴォォン!!

 大型ハンマーで大地を叩いたような、重い音が図書室中に響いた。ブックエンドがカタカタと揺れ、列の端に立っていた本が何冊か、ぱたりと倒れる。
 さすがにびっくりしたのか、ネギだけでなくのどかも音のした方──図書室の入口を見た。
 しかしそれで終わりだった。
 世界最大の蔵書数を誇る図書館島を持つこの学園は、書物を一冊たりとも失われてはならない重要な文化財として位置づけている。図書館島に比して質・量ともにはるかに劣るとはいえ、この図書室も大抵の災害に耐えられるよう頑丈に作られているのだ。
 ネギたちは知るよしもないが、扉の外では明日菜が右足を抱えて痛みをこらえるためにぴょんぴょん片足で跳ねまわっている。
(一体何が……)
 そうネギが思った時、彼の唇に、柔らかく、暖かいものが触れた。
「!」
 隙を見てついにネギの唇を奪ったのどかは、驚き慌てるネギを抑え付けたままキスを続ける。
 単なるキスに留まらず、舌を出して唇や前歯を舐めまわすという、とても普段ののどかからは想像できない扇情的なことまでやってのける。
 ホレ薬はただ相手に恋心を抱かせるだけではなく、性的に大胆に、積極的にする効果があるようだ。そうでなければ、そもそものどかが相手の制止を無視して口付けを強要するはずがない。
 ネギが何か言おうとした瞬間を狙い、のどかは舌を進めた。すぐさまネギの小さな舌を捕らえる。
 反射的に逃げようとするネギの舌を追って深く侵入し、舌同士をからませる。
 ちゅっちゅっと音を立ててネギの唾液を吸い飲んだかと思うと、とろとろと舌を伝わせてネギの口に自分の唾液を送りこむ。
 いつも本ばかり読んでいて世間知らずな印象のあるのどかだか、よく考えてみればベッドシーンが平気で出てくる一般小説など無数にあり、中にはそれを濃厚に描写している本もある。実践が伴っていないだけで、性に関する知識は実はクラスでも先頭集団を走っているのだ。
 清純そうな美少女と唾液の交換をするという快楽に、ネギは芽生えたばかりの性欲に溺れそうになる。
 しかし、性欲に首まで浸かったネギを引っ張りあげるように、姉の言葉が彼の頭に大きく鳴り響いた。
『先生と生徒がそういう関係になっちゃいけませんよ』
 最愛の姉の言葉に必死でしがみつき、理性を総動員して暴れるネギ。
 しかし、四六時中大量の本を持ち歩いているのどかは意外に力が強く、簡単に押さえ込まれてしまう。魔法を使って筋力を強化することもできるが、ネギ自身が未熟なためうまく制御できず、のどかを怪我させてしまう恐れがあるためそれはできない。
 それでもバタバタともがいていると、急にのどかの力が抜けた。
 見れば、のどかは体を起こしてネギを抑え付けるのを止め、散乱した本の中、正座を崩したようないわゆる『女の子座り』で座っている。
 突然のことに眉を潜めながらネギは上体を起こす。
(ホレ薬の効果が切れたのかな……)
 確かめるために表情を見たかったが、前髪で目の辺りはすっぽり隠れてしまって何もうかがえない。
 と、その前髪の奥からつうっと一粒の涙のしずくが頬を伝った。
 それをきっかけとするかのように、あとからあとから大粒の涙がのどかの頬を濡らしだした。
「み、宮崎さん!?」
 狼狽するネギに、のどかは涙に濡れた声で言った。
「ごめんなさい先生……ごめんなさい……」
「あ、あの……」
 のどかの突然の変わりぶりに、ネギは冷や汗を流した。とにかく、宮崎さんの涙を止めなければ、と思った。教師としてではなく、一人の男としてそう思った。しかし一体何が原因で泣いているのかわからない。
 のどかは続けた。
「ごめんなさい……わたし、ネギ先生の気持ち無視してました…………ごめんなさい……ごめんなさい…ごめんなさい……いくら私が先生を好きでも……先生にキスしたくても……先生が嫌がるキスは…全然気持ちよくありませんでした……ごめんなさい……」
 そこまで言って、のどかは大きくしゃくりあげた。上を向いた一瞬、前髪せつなく踊り、涙に溢れた瞳が見える。
「でも……先生、嫌いにならないでください……嫌いにならないで……ごめんなさい……嫌いにならないで……嫌いに…………ごめんなさい、ごめんなさい……でも嫌いにならないで……」
 つぶやくように、ささやくように、最後にはほとんど聞こえないほど小さくなるのどかの言葉。
 ネギは起きあがり、のどかを渾身の力で抱きしめた。
「……えっ…」
「宮崎さんっ! 僕は宮崎さんを絶対に嫌ったりしませんっ!!」
 ネギの頭あったのは、のどかを一瞬でもはやく泣き止ませたい、ただそれだけだった。
 のどかが目の前で泣いている。それは姉の言葉、教師としての立場を一撃で消しとばすほど辛い事だった。
 一体、のどかの涙を止めるのに一番いい方法はなんだろうか?
 思い付いた瞬間、ネギは躊躇なく実行する。
 のどかの首に手をまわし、その唇に、溢れる気持ちの全てをこめて口付けをした。前髪の奥で、閉じられていたのどかの瞳が、大きく開かれた。
 静寂。
 広い図書室に、物音を立てるもの一つ無い。
 ネギとのどかが唇を交わす間、本の紙が湿気を吸って脹らむ音すら聞こえてきそうな静けさ。
 その無音の時は、のどかの顔を濡らす涙が乾ききるまで続いた。
 舌も使わずに、くっつけるだけのキスを交わしながら、至近距離で見詰め合う二人。
 やがて、のどかの手がおずおずとネギのネクタイに触れた。
 それに応えて、ネギものどかのネクタイに手をかける。
 あらかじめ練習していたかのように、同時に相手のネクタイをほどいた。
 そのようにして、キスを続けながらお互いに上着の前ボタンを外す。
 上着を脱がす。
 Yシャツのボタンを外す。
 Yシャツを脱がす。
 アンダーウェアを脱ぐ時はさすがにキスは中断したが、脱いだ後に再び口付けする。
 ネギがブラを外す間、のどかはベルトを外す。
 膝立ちになる。
 スカートとズボンのホックを外す。
 体を支え合いながら立ちあがり、下着を落として足を抜く。
 相手の服を脱がす仕草の一つ一つに、愛しさが満ちている。
 そのまま、キスを続けながら全裸で二人は抱き合った。
 わざわざ相手の体をまさぐる必要もなく、むきだしの肌を重ねているだけでこの世のものとは思えない心地よさがあった。先ほどの激しいディープキスにあった、全身を駆け巡るような強い快楽が無い代わりに、相手が自分と一緒に居てくれるという柔らかい喜びを感じた。
 しかしネギも幼いとはいえ男、性欲を刺激されないわけがない。
 サイズこそ小さいものの、充分な硬度で肉棒が立ちあがり、のどかの白く柔らかな太ももに当たる。 
 その暖かな体温を敏感な先端に感じて、ネギは「うっ」とうめき声をあげ、切ないく眉を寄せる。
 のどかの方から唇を離し、静かに言った。
「先生、もう一つ私のわがままを許してくれますか」
「僕はまだ一度も宮崎さんにわがままを感じていませんし。今もそうです」
 ネギはそういうと、いったんしゃがんでから、自分の着ていたスーツを図書室の床に広げ、即席のシートとした。
 もちろんネギ用なのでサイズが足りず、のどかが自分の制服を使って面積を増す。
 二人して準備を終えると、のどかがシート代わりのスーツに腰を降ろした。
 体育座りの姿勢から、徐々に足を離していくのどか。全身が羞恥で真っ赤にそまっており、ネギの顔を正視できないのかあさっての方向を向いている。
 図書室の抑えられてた照明の下、のどかの裸体があますところなく露わになる。
 胸や腰の発育はまだまだだし、薄い色の性器を飾る毛も芽生えはじめたばかりだ。しかし雪のように白くしみ一つ無い肌、肉付きの薄いきゃしゃな体格は、色気に欠けるものの妖精のような一種神秘的な美しさがある。
 闇に浮かぶ真珠のようなその肢体にネギは言葉もなくみとれた。
「先生……」
 と、催促とも抗議とも取れるのどかの声にはっとネギは我にかえった。
 のどかの開いた両足の間にひざをつく。のどかはそれを受けて、上半身を倒して仰向けに寝そべった。前髪がはねあがり、露わになった目元は羞恥とわずかな期待をのぞかせている。
 ネギはいったんのどかの頭の両脇に手をつき、そこで一つ深呼吸した後、腰を前に進めた。
 性体験はもちろん、それに関する知識すらろくにない年齢のネギだ。いきなり入るわけもない。しかし、顔だけ起こしたのどかが右手をネギのペニスに添え、左手で自分の割れ目を軽く広げ、誘導する。
 ついに、ネギの先がのどかの入り口に触れた。
「「ああっ」」
 それぞれ感じやすい部分に刺激を受けて、同時に声をあげる。
 一呼吸置いて、ネギは腰をさらに前に。
「っ痛」
 っとのどかが顔をしかめる。
「宮崎さんっ」
 思わず腰を引こうとするネギを、のどかは両手で彼の腰を抱くようにして止めた。目尻に涙をのぞかせながら、
「大丈夫です。想像していたより痛くない……」
 と言った。ネギのものはサイズもだいぶ小さいし、決して強がりというわけでもないだろう。
 のどかは両手をネギの背中に回し、抱き寄せた。ネギはそれに応じてのどかの上に覆い被さり、再び固く抱き合いながらキスをする。
 今度は軽く舌先を触れあわせる程度に深いキスを交わしながら、ネギは小刻みに、くっくっくっと腰を動かす。
 ネギの呼吸が次第に荒くなり、間もなく「うっ」といううめき声を発して、ぐったりとのどかに体重をあずけた。
 ネギの重さと、体の奥の熱を感じながら、のどかは柔らかく微笑みを浮かべた。

 しばらくして、性交の余韻から抜け出した二人は、破瓜の出血と精液をティッシュで拭うと、いそいそと服を着だした。
 不思議なもので、さきほどまで裸で抱き合っていたにも関わらず、のどかはどこか恥ずかしそうに、ネギと視線を合わせようとしない。しかし、それでいてときどき、ちらっちらっと、ネギの方を盗み見るように見ている。
 ネギの方もそれに釣られてなんだか照れくさく、服を着るのに専念しようとした。しかしやはりのどかの方を見てしまう。
 時々、のどかがネギを見るタイミングとネギがのどかを見るタイミングが一致して、目があってしまうことがある。そんな時はじっと見つめあったあと、顔を赤らめて視線を外すのだった。
 すっかり服を着終わって、さあそろそろ外の様子を見てみようかと二人が扉へ近付いた瞬間。

 ドゴォン!

 ここでほんの数分、時間をさかのぼり、場所を図書室の外に移す。
 外から施錠を解くこともできず、得意のキックでも破れない扉を前に、明日菜は進退極まっていた。
 ネギの魔法が秘密である以上、事情を説明できないので図書室のキーを借りたり、誰かに力を貸してもらうこともできない。
 えんえんとどうしようか悩み続けていた明日菜。しかし中ののどか達が心配で、いてもたってもいられず、無駄とわかっていてもドアノブをガチャガチャやる。
 すると、さっきまではピクリとも動かなかった扉が、ほんの数ミリではあるが前後することがわかった。
 思い付いてちょうつがいを調べてみると、先ほどの蹴りの衝撃で少し緩んでいる。
 それを知った明日菜の行動は、バカレッドの異名に相応しいものと言えよう。

 ドゴォン! ドゴォン! ドゴォン! ドゴォン! ドゴォン! ドゴォン!

 足をかばって多少加減してあるが、それでも充分に強力な蹴り。一撃ごとに、ちょうつがいが震え、少しずつ歪みが大きくなっているのがわかる。

 ドゴォン!
 
 衝撃音と共に、『ギリィ』という、金属の断末魔がかすかに聞こえた。
 行けると判断した明日菜は、軸足を踏みしめ、ぎゅるっと猛スピードで体を回転させ、パンツが丸出しになるのも構わず、こんな面倒なことの原因になったネギへの怒りを込め、力学的エネルギーを詰め込めるだけ詰め込んだ回し蹴りを図書室の扉に叩き付けた。
「こーのネギ坊主……何をやっとるか───ッ!!」

 バキィッ!
 
 ちょうつがいがはじけとび、観音開きの大きな扉が宙を待った。
「わ──っ」
「あうっ」
 ネギとのどかの悲鳴にはっと我にかえった明日菜。ネギが四つん這いで涙目になりながら
「ア、アスナさん!! あ、あぶないです」
 と抗議している。その向こうでは、蹴り飛ばされた扉が当たったのか、のどかが目を回していた。
「あ、本屋ちゃん! ……じゃなくて宮崎さんまで。ゴ、ゴメン」
 慌てて明日菜はのどかのもとへ駆け寄り、気絶している彼女を抱きかかえる。
 そしてじろっとネギの方を睨んで言った。
「全く……世話がやけるわね!」
「あ、ありがとうございますアスナさん!」
 とここでネギは、明日菜が気づかないほど短い一瞬、言葉に詰まる。
 よく考えたら明日菜には何一つ助けられていないのである。
 しかし図書室で何があったか正直に言えば、明日菜がどんな反応をするのか手に取るようにわかる。まして、あの頑丈な扉を破る蹴りを見せられた直後とあっては……。
 ネギは一瞬でそこまで考えて、言葉を続けた。
「助かりました……」
 

   第二話 終わり


次回予告!
大浴場にやってきたネギとアスナ。体を洗っていると2−Aのクラスメートたちがやってきたので、慌てて隠れる二人。クラスメートたちはそこで、胸の大きさでネギの居候する部屋を決めようという話をしだす。隙を見て逃げようとするネギたちだったがしかし、うっかり見つかってしまう。もしそのまま、ネギとの相部屋権をかけて胸勝負がはじまったら……? 乞うご期待!

 

次へ

図書室にもどる   玄関にもどる

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