ifネギま! 〜一話一妄想〜




ifネギま! 〜 一話一妄想 〜



第三十三話



 修学旅行二日目の朝食後、のどかは勇気を出してネギを自由行動に誘い、ネギはそれを承諾する。もう思い残すことはないと言うのどかに対し、ハルナは思い切って告白しろと言うのだが……。

「え〜〜!? そ、そんなの無理だよぅ──」
 頬をはたかれて涙目になりながら、のどかは言った。
 なにしろ班行動にネギを誘っただけで、クールな夕映を感動させるほどの奥手にして引っ込み思案なのどかである。告白と聞いて、彼女の親友たちをやきもきさせるマイナス思考が次から次へとわいてくるのだ。
 各種の需要に応えた美少女咲き乱れるクラス内にあってのどかは自分の容姿にもスタイルにも自信が持てないし、ネギとクラスメートたちが交流する時は、どうしてもその中心に飛び込めず一歩距離を置いてしまう。
 何より、断られた場合を考えるとそれだけで目がくらむのだ。今日、ネギを誘えたことに関しても、彼女自身ほとんど奇跡としか思えない。
 しかし、ハルナはあくまで強い調子で言った。
「無理じゃないわよ。いい!? 修学旅行は男子も女子も浮き立つもの!」
 顔の横に持ってきた拳を握り締め、仁王立ちになって力説する。
 どうしてこんなにいっしょーけんめーなんだろうと、のどかが不思議に思うほどの力の入りようである。やはり友人である自分を心配しているからだろうかと純真なのどかは思うのだが、横で聞いている夕映にはもちろん、ハルナが楽しんでいることを見抜いている。
 ハルナはたたみかけるように続けた。
「麻帆良恋愛研究会の調査では、修学旅行期間中の告白成功率は87%を超えるのよ!!」
 ハルナの言葉に、夕映は(またテキトーな……)と冷めた思いである。麻帆良恋愛研究会なんて集まり、聞いたことが無い上に、どうやってそんなもの調査したのやら。
 しかし肝心ののどかは、その圧倒的な成功率に驚いたようである。
「ははははちじゅうなな?」
 のどかの心がやや動いたことを敏感に察したハルナは、さらにもう一押しする。
「しかもここで恋人になれば明日の班別完全自由行動日では、二人っきりの私服ラブラブデートも……!」
 ハルナの頭から、ポワポワポワと雲のような、わたあめのようなものが飛び出し、頭上に枠が点線の、大きなフキダシを作る。

 フキダシの中では、なぜかこのまま結婚式にでも行こうかという白いタキシードを着たネギと、ワンピースに小さなバッグを肩からさげたのどかが、手をつないで楽しそうに走っている。ハートマークが二人の間を飛び回り、背景には通天閣やら食い倒れ人形やら、大阪っぽいものが二人を祝福するように並んでいた。

(ア……アホなイメージ映像です……)
 夕映は大きな汗を流しながら思ったが、のどかはなにやらショックを受けたようだった。
(ラブラブデート……ネギ先生と────……87%で……)
 前髪からのぞく目が点になり、頬が紅潮している。
 のどかの反応を見てとったハルナは、さらに調子づいた。目がらんらんという光を称えだし、頭の上のフキダシがどんどん大きくなっていく。夕映は横目でハルナを見ながら、「また始まったです……」と小さくつぶやいた。
「うふふふふ、もちろんラブラブデートというからには単なるデートじゃないわよ。なんてったってラブラブなんだから、当然お互いに抱きしめあったり……」

 フキダシの中のネギとのどかは、走るのをやめてお互いに向かい合った。二人同時に一歩前に進むと、身長の関係でのどかはネギの背中に、ネギはのどかの腰に手を回す。いつの間にか背景は天高く水を吹き上げる大きな噴水の前に変わり、日差しをキラキラと反射する水滴のバックに二人はぎゅっと抱きしめあうのであった。

「ひ、ひええええええええ」
 首まで真っ赤にして、ハルナの妄想を見つめるのどか。その内容におののきながらも、目を離すことができなかった。ごくりと唾を飲み、次にどういう展開になるのか拳に汗を握りながらフキダシを凝視する。
 同人気質とでも言うべきか、この手の期待をされると過剰なまでに応えてしまうのがハルナである。
「キスまでたどり着く可能性も高いわ。麻帆良異性交流調査班の調査によれば、その確率はなんと81%!」

 いつしかフキダシの中は黄金色に染まり、背景は噴水公園から夕日の沈む海岸へと変わっている。
 ベンチに仲良く並んで座っているネギとのどかは、半身を水没させながらも煌々たる光を放つ太陽を眺めていた。やがて、どちらともなく二人は手を握り合い、顔を横に向けて見つめ合う。
 二人の顔が徐々に接近していく。それぞれ目をつむり、唇と唇が求め合うように接近し、……。

「きゃー、きゃーっ」
 キスをしたところで、のどかはなぜか悲鳴をあげると、バタバタと両手を振り回した。彼女も、そしてハルナもすっかり忘れているが、彼女らのいる場所はそれなりに人通りのある往来である。
 突然大声を出したのどかに、近くをのそのそと歩いていた鹿がびっくりして彼女の方を振り向き、通りすがりの観光客は不審な視線を送っている。
 ただ一人冷静な夕映は、自分たちに向けられる奇異の目を多少わずらわしく思っていたが、もともとマイペースな性格なので特に気にはしていない。
 むしろ、そろそろのどかの許容量が限界に近づいていることの方が心配である。
 すでに頭から湯気を出して倒れてもおかしくないほど真っ赤になっているのだが、ハルナはインプレッサを駆る藤原文太のごとく妄想を加速させていく。
「もちろんキスのあととなったら、いきつくところは一つしかないわよね」
「ど、どこですか? どこに行くんですか!?」
 握った両手で口を隠すようにしながらきくのどかに、ハルナは人差し指を一本立ててゆっくりと言った、
「決まってるじゃない、ホテルよ、ホ・テ・ル。麻帆良ラブ・リサーチ・サークルの調査によれば、その確率は65%!」
「ホホホホホホホ」
 別に笑っているわけではない。ホテルという言葉が刺激的過ぎて、のどかの声帯が発音できずにいるのである。
 ハルナの頭の上のフキダシは今や部屋一つ分ほどの大きさにまで成長し、その中では等身大のネギとハルナが動いている。

 すっかり日の暮れた街で、寄り添って歩くネギとのどかは、海岸沿いの真っ白なホテルの中へと消えていく。
 場面変わって、いきなりホテルの部屋の中。

 受付をどうやって済ませるのかとか、そういう具体的な知識は無いんですねと、横から見ている夕映が心の中で突っ込みを入れた。

 部屋には床一面に絨毯が敷き詰められており、真ん中にどんっと円形のベッドが配置されている。まくらが二つならんだベッドの脇には、ネギの背丈ほどもあるアンティークな意匠のベッドサイドランプ。調度はそれで全てで、ハルナの意外に貧相な知識を表していたりする。大きな窓からは、無数に灯のともる美しい臨海都市の夜景が見えていた。
 ベッドの上には、正座を横に崩す、いわゆるおんなのこ座りをするのどか。ネギはその正面に膝立ちして、のどかと相対している。
 ネギはのどかの両肩に手を置くと、緊張で体をこわばらせるのどかにそっとキスした。
 音も立てない触れるだけの口付けだが、のどかはそれだけでうっとりとした表情を浮かべている。
 ネギは一点の曇りも無い瞳でのどかを正面から見つめると、言った。
「のどかさん、あなたが欲しいです」
 そのあまりに真摯な視線に耐えられず、思わず顔を背けてしまうのどか。しかし、彼女は恥じらいに身を震わせながらも、ゆっくりとうなずいた。
 ネギはのどかの顎を指でとらえてやさしく正面を向かせると、もう一度キス。そして静かに彼女をベッドの上に横たえた。
 じっと彼を待つのどかを前に、ネギは手早く蝶ネクタイを外し、白いタキシードの上を脱ぐ。白いシャツまでも脱ぎ捨て、意外とたくましい上半身でのどかの心臓をドキドキさせた後、のどかに覆いかぶさる。
 抱くようにしてのどかの背中に手をまわし、後ろのボタンを外していく。のどかは色素の薄い肌をピンク色に染めて、ネギに身を任せていた。
 やがて全てのボタンが外されると、ネギはワンピースの肩に手をかける。このまま一気に下に下ろせば、のどかは下着姿になってしまうわけだが、その前にのどかが精一杯の声を上げた。
「ネ、ネギ先生、明かりは……」
 震える声の懇願だ。ネギはうなずくと……いきなり天井の照明が消え、ベッドサイドランプが小さく灯った。

 ああ、ここでネギ先生がベッドから離れて、照明のスイッチを切りに行くのは興ざめだと思ったわけですね……と夕映が的確に今の怪現象を分析したが、のどかは気にしていないようである。瞬きも忘れて、フキダシの中の自分を見つめ続けていた。

 ランプの柔らかな黄色い明かりにそっと包まれたのどかは、ほっと息を吐いた。
 その隙をつくかのごとく、ネギはのどかのワンピースを腰の下まで下げた。
「ひゃっ」
 と彼女は驚きの声をあげてしまうが。もちろんネギの手を止めることは無い。緊張に体を小刻みに震わせながらも、健気に腰をあげて、ワンピースと下着とを脱がしやすいようにする。
 のどかの服を全てとりさると、ネギもまた手早くズボンと下着を脱いでお互いに一糸もまとわぬ姿となった。
 頭の側に光源があるせいで、腰より下は暗がりになっていてよく見えない。ただ、見えていたらのどかは恥ずかしさのあまり失神してしまったかもしれない。
 ネギはのどかに覆いかぶさると、唇を触れ合わせながらゆっくりと、腕をわきから背中に回して、彼女を抱いた。
 肌が熱い。
 唇と、胸と、腹と、手と、足と……体の半分が、密着している。触れ合った部分が、溶けそうなほどに心地よかった。
 ネギがそっと舌を出してのどかの唇をちろちろと舐めた。のどかは目を閉じ、震えながら口を半開きにすると、ゆっくりネギの舌が入ってくる。のどかも舌を差し出して迎え入れる。
 二人の唇の間で、舌の先端同士がそろそろとまさぐりあった。激しいというほどでもなく、濃厚というほどでもなかったが、一心の口付けだった。
 密着した胸からお互いの心臓の音が伝わってくる。内臓を揺さぶるように大きく、乱打するように早い鼓動だ。それが微妙にシンクロしあい、あたかも二つの心臓を持つ一つの生物になったかのような錯覚すら覚える。
 好きな相手と裸で抱き合うことが、こんなにも幸福なのかと、のどかは感激していた。このまま食事も取らず、大好きな本すら読まずに、永久にこの体勢でいられたらと、そこまで思う。
 しかし……。
 ネギはどうなのだろうかと、頭の片隅で考える。
 読む本のなかにそういうシーンがしばしば出てくるせいで、彼女は奥手な性格にも関わらず、ある程度の性の知識はある。
 男である以上、ネギはこうしているだけでは満足できないはずだ。自分を気遣って、我慢しているのだろう、そう彼女は考えた。
 太ももの辺りに意識を集中していると、その辺りに硬いものが触れている。
 恥じらいに顔を真っ赤にしながら、のどかは勇気を振り絞って手をそこへやった。
 初めて触れる男の性器は、不思議な感触だった。外側は柔らかいのに、皮一枚下には鉄の芯が入っているかのような硬さがある。
 のどかが触れると、ネギは少しびっくりした様子で、身じろぎした。
 だが、のどかがネギのペニスの先端を、自分の割れ目にあてがうに至って、その真意を理解した。
 体勢を変え、のどかの頭の両側に手をつき、腰を動かしやすい形にする。
 薄明かりの中で、ネギとのどかは見つめあった。
 ネギは無言だったが、その目を見つめていたのどかには、タイミングがわかった。
 のどかが覚悟を決め、未知の苦痛と、その先にある喜びに備えて歯を食いしばった一瞬後、ネギが侵入してきた。
「……………っ!!!」
 絶対に、声は出さない。ネギに余計な気遣いをさせたくない。そう決意して迎え入れたのどかだったが、破瓜の激痛は彼女の想像を越えていた。
 ネギのものが比較的大きかったこともあり、無理矢理に身体を引き裂かれるかのような苦痛だ。全身を強張らせて痛みを受け止めないと、意識が遠のいてしまう。
 ただそれでも彼女にとって都合が良かったのは、ここまで痛みが激しいと、逆に悲鳴をあげることすらできないということだった。
 のどかを割り裂いてさらに奥へと入ってくるネギ。のどかは呼吸することすら忘れてひたすらそれに耐える。歯を強く食いしばり過ぎて顎の筋肉が痛い。目じりから、涙があふれてくる。
 ひたすら長く感じた挿入の時間は、ようやく終わった。
 いまだ痛みは酷いが、このまま動かなければなんとかなる。下腹部の異物感はとても気持ちいいと言えるものではなかったが、ネギが自分の内側に侵入していると思えば、かすかな嬉しさがある。
 のどかは全身から力を抜いた。息を止めていたせいで、荒い呼吸になってしまう。
「のどかさん、大丈夫ですか?」
 ネギの問いかけに、のどかは悔やんだ。
 余計な気遣いなく、ネギに気持ちよくなってもらうはずだったのに……。
 のどかの両目から、また少し涙が出る。その涙を、ネギは無言で、唇を使って拭った。
 両目にキスしてのどかの涙を止めたネギは、再びのどかの唇にキスをすると、そのまましばらく動かずに彼女を抱きしめていた。
 時が経つにつれて、しだいに痛みは弱まっていった。もちろん完全に消えたわけではないが、異物感は充足感にとって変わっていった。まさに、自分に足りない何かが埋め合わせられた感覚だ。
 のどかがそっと腰を身じろぎさせると、それだけで思いが伝わった。
 ネギがゆっくりと、小刻みに腰を動かしだす。
 摩擦が起こる度に、しみるような痛みがのどかをさいなんだが、この程度なら充分に耐えられると思った。
 のどかがさほど苦しまないのを見て、ネギは次第に速く、大きく腰を動かしていく。もちろん彼も初めてのことであるから、技巧も何も無い、単調なピストン運動だ。
「う……」
 と、ネギがうめいた。彼の呼吸が荒くなっていく。
 ああ、ようやくネギが感じてくれた。その思いが、肉体的な痛みを忘れさせてくれる。
 ネギの漏らす息遣い、かすかなあえぎ声、体の内側で感じる肉棒の硬さ、それら全てが、自分が女としてネギに快楽を与えているという大きな満足感を与えてくれる。
「ああっ、の、のどかさんっ!! はぁっ、はぁっ、のどかさんっ!」
 急速に腰の動きがはやまり、ネギがのどかの名を呼ぶ。
 ぎゅっと心臓を締め付けられるような感動を覚え、のどかはネギの体に思い切り抱きつき、痛みを振り払って自分からも腰を動かしだす。
「ネギ先生、ネギ先生、わたし嬉しいですっ!」
「あ、のどかさんっ、僕、も……………っ!!」
 お互いに相手の名を呼び合いながら、高みへと上っていく。
 そしてついに……。
 のどかはネギが放出したのを感じ、宙を舞うような巨大な幸福感で、何も考えられなくなるのだった。

「どう、のどか!? 告る気になった?……ってあれ」
 妄想の暴走が行き着くところまで行ってようやく現実に戻ってきたハルナが見たものは、目を回して路上にへたりこのどかと、その肩を掴んで揺さぶる夕映の姿だった。
「起きるですのどか! 大丈夫、ハルナの話は八割方ありえません。せいぜいデートくらいなものですっ。起きるですのどかっ!」
「う、う〜ん」
 うめきながら頭を押さえ、立ち上がるのどか。
 夕映はのどかが立ち上がったのを確認すると、未だベッドインしたままのネギとのどかが映っているハルナのフキダシを大急ぎで打ち消した。
 ついでに、いったいどこにしまっておいたのか……「Deirdre―From earliest manuscripts to Yeats and Synge」(1280ページ)を取り出して、ハルナの頭をゴチンとやった。
「あたっ」
「ハルナもいい加減にするです」
 そしてのどかの方に向き直った。
「のどか、とりあえずハルナの言ったことは忘れるにしても、ネギ先生へ告白するのは悪いアイデアではないです」
 のどかはしかし、顔を赤くすると、うつむいて夕映たちに背中を向けた。
「そ、そそそそんな急に……私、困るです」
 もじもじと小声で言う。が、その後に「でで、でも……あう、デート……」とさらに小さな声で付け足したのを、二人は聞き逃さなかった。
「ここまで来て何言ってんの! 大丈夫、今のあんたならいけるって!!」
 拳を高く振り上げて言うハルナ。
「ファイトです、のどか!」
 と夕映もはげました。
 業を煮やしたハルナは、待ちきれずに駆け出した。
「よし、まずはネギ君と二人っきりにならなきゃね、行くよ夕映!」
 夕映もその方がのどかのためだと思い、ハルナの横を走る。
「ラジャです」
 振り向いてみると友人二人が勝手に走り出しているので、のどかは慌ててその後を追って走った。
「あ、ちょ、まだ心の準備が──……」


   第三十三話 終わり


次回予告!
 のどかがネギに告白したと知る、報道部朝倉和美。最初は気の乗らない取材だったが、ひょんなことからネギが魔法を使うところを目撃してしまう。朝倉はスクープを求め、ネギの正体を探るのだった。もし、彼女は変装&色仕掛けでネギの秘密を聞き出そうとしたら……? 乞うご期待!

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