ifネギま! 〜一話一妄想〜
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ifネギま! 〜 一話一妄想 〜
第三十九話
ネギ、明日菜、刹那の三人の奮闘もあり、自分が狙われているとも知らずに、修学旅行を楽しんでいる木乃香。しかしネギと明日菜が親書を届ける用事があるため、刹那は一人で木乃香を護衛することになったのだが……。
(いい笑顔だ……)
刹那は腕を組み、軽い微笑みを浮かべながら、思った。
彼女の視線の先には、木乃香の後ろ姿がある。夕映やハルナと共に、ゲームに興じているのだ。
キャッキャッと実に楽しげな声が、刹那のところまで聞こえてくる。時折見せる横顔が、輝くような笑顔を浮かべていた。
刹那は思う。
(麻帆良学園に行ってからというもの、友人も多く得て明るくなられた。やはりこのかお嬢様は何も知らずに、このまま平和に暮らしていただくのが一番……)
刹那は、木乃香をなるべく魔法から遠ざけておきたいという木乃香の両親の考えに、賛成である。世の中には知らない方がいい世界、関わるだけ危険な事物、というものがある。
そして、刹那自身が、その関わらない方がいい物の一つでもあるのだ。
(修学旅行では少し親しくしすぎた。学園に戻ったら今までどおりあまり関わらず、陰から密かに見守るようにしなければ……)
ちくりと、小さな針が胸の奥に刺さる感覚。
木乃香と思いがけず近づいた、ここ二三日のことが頭をよぎったのだ。
わずかな時間であったが、夢のような甘美な時間だった。
ただ一方的に見守るだけだった関係が、向こうから見つめてくる。話しかけてくる。近づいてくる。
それはたとえるならば、写真でしか見ることのかなわなかった憧れの人物が、目の前に現れて語りかけてくるのにも似て……。
(いや、しかし、それも今だけのこと)
刹那は軽く首を振った。木乃香のためを思ってのことだ、辛くは無い。
辛くは無い。
刹那はもう一度、自分にそう言い聞かせた。
(そう、密かに見守る。それだけで充分なのだ……)
刹那はこれまで自分が密かに行ってきた、木乃香の護衛を思い出していた。
中一の頃のことである。
当時、木乃香は思いがけぬ偶然の再会と思っていたようだが、もちろん刹那にとっては本格的な任務の開始だ。
笑顔で声をかけてくる木乃香に、冷たい態度をとるのは苦しかった。そのことで木乃香が寂しい思いをしているのを見るのは、さらに耐え難い苦痛だった。
が、間もなく木乃香は持ち前の明るさを発揮しはじめる。同室の明日菜をはじめ、クラスメートと仲良くなっていった。それに連れ、自然に刹那との間も疎遠になっていく。
一学期も終わる頃、木乃香と刹那は同じ教室にいながら、ほとんど会話を交わすことも無くなっていた。
二学期になり、今度は逆に刹那の方が木乃香をつけまわすことになる。ただし、木乃香にはまったく気づかれないように、だ。
学園は全体が巨大な結界で覆われ、侵入者は何人かいる『警備員』によって撃退されるはずである。が、麻帆良学園の敷地は広い。どこかに抜け道が無いとも限らない。
木乃香の秘められた潜在能力を狙う輩から、彼女を守るための、刹那の孤独な戦いがこの時はじまった。
睡眠や『仕事』など、どうしてもという時以外は、つきっきりの護衛をする日々が続いた。また離れている時も、式神やちびせつなを使ってできる限り安全を確保するよう努力している。
適度に距離を開けて後をつける。物影に身を潜めて見守る。壁一枚を隔てて怪しい気配が近づいていないか気を配る。
下手をすればストーカーも同然であるが、一般人に悟られるような刹那ではない。
もっとも、龍宮や楓など非一般人には隠しきれず、後に事情を話すことになったのだが。
そうやって絶えず木乃香を見守り続けてきた刹那だったが、一つ悩むところがあった。
可能な限り木乃香を守っていきたいと思っている彼女だが、では木乃香がトイレに入っている時はどうするのか。
トイレといえば、人間の営みの中でも最もプライベートな時間だ。木乃香に気づかれる心配は無くとも、刹那の方に罪悪感がある。
しかし逆に、プライベートであるということは孤立を意味する。襲撃者の立場に立ってみれば、絶好のチャンス。
折りしも、前方を歩く木乃香は、つと方向を変えてトイレに歩みより、ドアを開けて中に入る。
逡巡した結果、刹那は木乃香の安全を優先した。
そう、木乃香の安全を優先したのである。決してそれ以外の、やましい、口にするのもはばかられるような、少々マニアックな動機など断じて無い。刹那は自分にそう言い聞かせながら、木乃香の後を追ってトイレに向かった。
木乃香がトイレの個室に入った時間を見計らうと、刹那はトイレに入った。
清潔に磨かれたタイル張りの床が伸び、五つの個室が並んでいる。
足音を立てないよう施錠を確認する。
運の悪いことに、右端と左から二番目の個室に施錠がされていた。
どっちに入ったのだろうと刹那は考え込んだが、すぐにガチャリと鍵の外れる音。
慌てて彼女は、洗面台に向かって鏡を覗き込み、髪を直している風を装う。
鍵が開いたのは左から二番目の個室で、中から出てきたのは彼女のクラスメートである綾瀬夕映だった。夕映は特に刹那を気にする様子も無く、手を洗って出ていく。
これで、木乃香が入っているのは右端の個室と確定したわけだ。
刹那は異様な心臓の高まりを覚えつつ、木乃香のとなりの個室に入り、そっと鍵をかける。
木乃香がいる側の、クリーム色の壁をじっと見つめた。
このごく薄い壁の向こうで、木乃香が下着を下ろして用を足している。そう考えると、なぜか全身がぶるぶると震えるほどの緊張と興奮が押し寄せてくる。
いったいこの興奮はなんなのか。
刹那は少し考えたあと、狭くて身動きのとりづらい場所にいるので、襲撃を警戒して体がアドレナリンを出しているのだ、と結論づけた。
かなり強引な理由付けである。それにこれでは、下腹部の辺りにうずうずと蠢くような熱があることが説明できていない。しかし彼女は、そのことには気づいていないふりをしいてる。
そこで彼女はふと気づく。
この女子トイレ、和式便器なのだ。
ヨーロッパ調の建築様式を取り入れた麻帆良学園の校舎に、和式便器とはいかにもそぐわないように感じるかもしれない。
しかし、いささか潔癖症気味の最近の女子生徒は、他人の座った便座に触れるのを嫌がるものが多い。そういった声を反映して、麻帆良学園のトイレには和式便器の割合が多いのだ。
このトイレは刹那も何度か利用していたが、木乃香が入っている個室もやはり和式のはず。
途端に、刹那の頭の中に、足首までパンツを下ろしてしゃがみ、大切な部分を丸出しにして放尿する木乃香のイメージが浮かんだ。
ぼっと刹那の顔が赤くなる。
そんな姿を思い浮かべるなど、不敬の極み。
そう思って必死で打ち消そうとするが、頭を激しく左右に振ろうと、あるいは修行の時に行ったように精神の平衡を保とうとしようと、イメージは消えるどころか鮮明になるばかりである。
むらむらと激しい欲求が刹那の中に湧き上がってくる。
果たして、木乃香の股間はどうなっているのだろう。自分と同じようなのだろうか……。
熱に浮かされたように、刹那はぶるぶると震える手で人をかたどった一枚の紙片を取り出した。
小さく、「オン」と真言を唱える。紙片の周囲に蛍のような光が生まれ、手のひら大の、人形のような刹那の分身が出現した。
(ちびせつな、行け)
自分は到底許されない禁忌を犯そうとしている。
そう思いつつも、罪悪感からもたらされる鼓動の高まりは、逆に彼女の興奮に油を注ぐ結果となった。もはや理性で止められる範囲を超えている。
ちびせつなは主の命を受け、トイレの床と仕切りの壁の間、五センチほどの隙間に潜り込んでいく。
刹那は瞳を閉じ、頬を紅潮させながらちびせつなと視覚・聴覚をリンクさせる。
途端に、和式便器にしゃがんでいる木乃香の丸出しの尻が、視界一杯に映った。
しみ一つ、できもの一つ無い、磁器のように白くて滑らかな尻だった。
思わず頬擦りしたくなるほどだ。右側の尻には、蒙古班がまだ薄く残っているのが少し可愛らしい。
尻の割れ目の奥に見える、菊の門がちらりと見え、刹那は心臓が爆発するかと思うくらい興奮した。
刹那は息を荒げつつ、ちびせつなを通じてその光景を脳裏に焼き付けようとした。
もし、このまま木乃香がこの穴から排泄を行ったとして、刹那はそのまま排泄シーンを凝視し続けたことだろう。
しかし、幸か不幸か、今回木乃香は小用だった。
ちびせつなの耳に、ちょろちょろと水音が聞こえてくる。
彼女は、ちびせつなをそっと横に回りこませた。
黄色い液体を噴出する木乃香の股間が、ちびせつなの目に飛び込んでくる。
きれいな一直線の割れ目が、スカートの暗がりの向こうに見え──
「!」
刹那は思わず声をあげそうになった。
(こ、このちゃんもう生えてたんだ……!)
手を口元に当て、刹那は驚きに額に汗を浮かべた。まだほんのわずかな数、長さにしても一センチも無いが、確かに木乃香のそこは陰毛で飾られていた。
隣に聞こえるのではないかと思うほど、刹那はハァハァと激しく呼吸する。生えていない自分のそこは、いかにも子どもっぽいと思っていた。刹那は、木乃香が女性になりはじめていることを思いがけず知り、頭がくらくらするほど血を昇らせる。
やがて、用を足した木乃香はトイレットペーパーでそこを吹く。立ち上がろうとした直前、刹那は慌ててちびせつなを戻した。
木乃香が、鍵を開けて個室を出る音。
しかし刹那は個室の壁にもたれたままだ。木乃香を追って護衛を続けなければと思うのだが、この心臓の鼓動を抑え、呼吸を整えなければ外に出られない。
大きく深呼吸する。が、一度火がついた刹那の体は、鎖を外された獣同様、とうてい静まるものではない。
先ほど見た木乃香の下半身が何度もフラッシュバックし、その度にうずきが波となって押し寄せてくる。
とうとう我慢できずに、刹那はスカートをたくしあげ、自分の股間に手をやった。スパッツと下着の上から、性器に触れる。
待ち焦がれていた刹那の割れ目は、手が触れると思う存分快楽を彼女の全身に発信した。
「ひぐっ」
想像していたよりはるかに強い快感。刹那は歯を食いしばりながらも、さらに強く指を割れ目に食い込ませる。
自慰は最近覚えたばかりだ。その手つきはまだ稚拙だが、性感に慣れていない刹那には充分な刺激である。
「はぁっ、あ、あ、あ、こ、このちゃん、このちゃん」
両手で激しく股間を刺激しながら、刹那は小さくつぶやいた。
その名を呼ぶとより一層の快感が得られた。
身命の全てを賭けて守る相手を自慰の対象にする。あたかも、丹念に作った砂の城を自ら足蹴にする時のような、破滅的な喜びが胸の内から湧き上がってきた。
「ああっ、あ、あ、このちゃんっ、このちゃん、ご、ごめんウチ……!! ああああああああっ!!」
トレイに、刹那以外誰もいないのが幸いだった。
じわりとスパッツに染みができるのを感じながら、刹那はタイルに反響する自分の声の木霊を聞く。後悔と、罪悪感と、官能に浸りながら。
こうしてある意味、刹那は一線を越えてしまったわけだ。そうなると必然的に、他の部分に関してもたがが緩んでくる。
最たる例は、入浴中である。
トイレに次いでプライベートな時間と空間だが、木乃香は大浴場を利用することが多い。
そこで前々から刹那の方も風呂の時間を合わせ、離れた湯船を使って護衛を怠らないようにしていた。
それでも、やはり相手の裸をじろじろ見るのは失礼にあたる、というわけで、木乃香本人の体はなるべく見ないようにつとめていたのである。
しかし今や、トイレを毎回のぞいているわけだ。それに比べれば大浴場で裸を見ることぐらい、大して抵抗が無くなってしまっている。
無論近づいたりはせず、相変わらず離れた場所から見るだけ。しかし湯船からもうもうと湧き上がる湯気を通して、木乃香の肌をしっかりと観察するのである。
あまりにも湯気が立っていたりする場合は、やはりちびせつなを使って近くからじっくりと眺める。
そうして、二年間に渡って木乃香の胸の発育具合や、陰毛の様子などを盗み見する。夜、寝る前には、その時の映像を反芻し、一度──しばしば二度三度──自慰をしてから眠りにつくのが日課となった。
秘めることを運命付けられているが故に、ねじれて発露する想い。
いつか刹那のこの感情が、真っ直ぐに解放されることがあるのだろうか……。
第三十九話 終わり
次回予告!
鬼蜘蛛を撃退したのもつかの間、小太郎の猛スピードに翻弄されるネギと明日菜。二人は煙幕でいったん逃げることに。一方のどかはネギたちを探す小太郎と接触する。もし、小太郎が単純一途な言動とは裏腹に、とんでもないことを考えてたら……? 乞うご期待!